展示場へ(その3)

数日後、私たちは○社がうち用につくってくれたプラン集を持って、オットの実家に行った。

オットのご両親から簡単にOKをもらって、明日にでも○社と契約してしまうつもりでいたのだ。

なんせ、急がないと超破格値の限定5棟がなくなってしまう!






しかし、オットのご両親はあまり賛成できない様子。

結婚してまだ数ヶ月、頭金もほとんど貯まっていないため建築費のほとんどをローンでまかなうのに、そんなに勢いだけで家を建ててしまっていいものか、というのがその理由だった。




(た、確かに…。)





それに、オットのご両親は、あまり聞きなれない○社という住宅メーカーを、よく調べもせずに私たちが急いで契約しようとしていることも心配なようだった。

いきなり現実に引き戻され、冷めていく私たち。

 そう、私たち夫婦は、前にも営業マンの口車に乗せられ、痛い目にあったことがあるのだ。











忘れもしない、2001年秋、結婚を決めたばかりの私たちは、自分たちが結婚式と披露宴を挙げる場所を決めるべく、地元の結婚式場めぐりをすることにした。

ところが、とりあえず見るだけのつもりで入った2つ目の式場で、Sさんという妙に丁寧な中年営業マンの話を聞いているうちに、勢いで式場の申し込みをすることになってしまったのだ。







Sさんの手口はこうだ…。

まず、300人の招待客を予定している私たちに、それだけ広い会場が空いているのは、半年以内の大安ではまずない(普段は3つに区切って使っている大部屋らしく、すべて空きは難しい?)、

と落胆させておいて、「たった今キャンセルが入ったようなので、ちょっと見てきますね」とおもむろに事務所へ。

数分後、満面の笑みで戻ってくると


「ちょうどキャンセルされたので、この日だったら大丈夫ですよ。いやー、ラッキーですね!」 

などと言う。

「手付金がなくても、私の顔で明日までならなんとか抑えられますんで!」とまで言われてしまい、結局なんだかすぐにでも抑えなければならない気がして、そのまま会場を押さえることにしてしまった。

後日、たまたまその結婚式場で私の中学時代の同級生に再会し、その話をすると、やはりその子もSさんにまったく同じことを言われて、その会場を予約していたのだ!

Sさんのおかげで、予定よりも早い日取りになってしまい、後から結納の日取りを変更せざるを得ず、私たちの希望の場所での結納はできなくなってしまった…。







「営業マンの言葉を真に受けて、舞い上がってはいけない」…それが私たち夫婦が披露宴の会場決めで痛いほど学んだことなのに…。

○社の営業マンが言う「5棟のうち4棟が成約済み」は本当なのだろうか?

冷静に考えてみると、なんかあの営業マン、すごーく調子のいいことばっかり言ってる気がする。

間取りだって希望してる敷地におさまりきらないし、今決めて本当に後悔しないの??

…と2人で話し合った結果、やっぱり保留しようということになった。

○社には断りの電話をいれ、「勢いでなんか家をたてちゃあいけない!!」と胸に言い聞かせる2人なのだった。(いいかげん学んで欲しいものだ)







そして、その数ヵ月後私たちは、とんでもなく驚く出来事に遭遇する。

なんと、○社が倒産してしまったというのだ。

倒産の情報はオットが仕事の関係から聞いたものだったが、確かに後で○社の事務所(モデルハウスとは別の場所がある)を通りかかると、以前はあった”のぼり”の広告などもなく、もぬけの殻になっていた。

モデルハウスも、おうちの周りの素敵に手入れされていたガーデニングが荒れ放題になっていたので、倒産というのは本当らしかった。







しかも、さらに数ヵ月後には、同じモデルハウスにS社(その1に出てくる社名とは無関係)という住宅メーカーが入っているではないか。

○社が名前を変えた?それとも??

…色々と想像してしまうが、とにかく、○社の調子のいい営業マンに言われるがままに、家を建てなくて本当によかった…。

というわけで、そのときに、もうコレ(限定5棟!)を建てることはないね、と○社にもらった資料などは、忌々しい過去を捨てるべく、すべて処分してしまったのだ。

だからといって、私もオットもすっかり社名を忘れてしまうとは…。お恥ずかしい。

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